有望技術紹介

87 プラズマ照射によるフッ素樹脂と銅の接着

エステック株式会社
マイルドプラズマ処理によりフッ素樹脂表面に極性基を付与することで、低温プレスで銅箔に強固に接着する技術を開発した

【本技術の概要】

次世代情報通信である5G・6G等の通信機器のアンテナ等部品の材料として、高周波でも伝送損失が少なく、安価な基板材料として、フッ素樹脂(FP)が注目されている。フッ素樹脂は、最適な比誘電率と誘電正接をもつものの、難接着性のため被接合材料の粗面化やフッ素樹脂を改質して接着性を持たせて接合する。そのため、高周波損失が増大するという課題があった。

エステックは、フッ素樹脂表面に極性基(-COOH 基,-OH 基等)を高密度に付与し、樹脂の表層を粗さない量産型のマイルドプラズマ装置を開発した。また,従来の低温プラズマ処理と異なり、官能基の経時変化が少ないことも見出された。本技術を柔軟性フッ素樹脂に適用したところ、樹脂表面に存在していなかった-COOH基及び-OH基等の極性基が少なくとも6ヵ月以上樹脂表面に存在することを確認した。
本技術を用いて高周波用フッ素フィルムと超平滑銅箔(Rz 0.85μm)とを接着剤なしで、200℃以下の低温真空熱プレス接合したところ、伝送損失 -2.89dB/100mm(80GHz)で、プリント配線板の製品規格値0.65N/mm(90°ピール強度)を超える高強度接合力10N/cm が得られた。

【本技術の詳細】

 同社が開発したマイルドプラズマ技術は、独自の電源と電極により、照射するエネルギーをマイルドにすることで、樹脂表面へのエッチングによる物理的ダメージを少なくし、高密度の官能基を生成することができる。その結果、低温、低圧でも活性基同士の強い反応性により脱水縮合反応が促進され、接着剤を使わない直接接合を実現する。
【特徴】
 ① 高周波特性を損なうことなく、フッ素樹脂表面に極性基(-COOH 基,-OH 基等)を高密度に生成させることが可能。
 ② 生成された樹脂表面に存在する官能基は、少なくとも6ヵ月安定に樹脂表面に存在する。
 ③ 接着剤を使わない直接接合で、バルク特性が 100%維持できる。
 ④ 樹脂表面を親水化にも撥水化にも、自由自在に改善でき最適な条件で処理ができる。
 ⑤ N2、O2、Ar、H2、CO2 など使用可能なガスに制限がなく、使用量も少ない。

【本技術の技術開発・事業展開】

マイルドプラズマ照射装置

同社は、マイルドプラズマ照射技術によるフッ素樹脂フィルムを受託生産し、国内外の基板製造会社に販売を計画する。5G,6Gの次世代通信機器および、車の自動運転の実現に向けた高速通信用途向け需要も視野に入れる。
量産技術開発では、フッ素樹脂と銅箔を平板に圧着するだけでなく、生産効率の向上が見込めるロール状化に取り組み、平板に比べて大幅なコストダウンを実現している。また、ロール状にする機械は販売または既存機の改造でも対応可能なため有償で技術供与もする。

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