ヒトの体温を感知して、接着剤を使わなくても粘着力を発現する体温感知自己粘着シートを開発した。
【本技術の概要】
三井化学株式会社は、ヒトの体温を感知して、自己粘着を発現する体温感知自己粘着シートを開発した。シート自体が持つ自己粘着性のため、糊を使用することなく、シートそのものを人肌で加温することにより、シート同士を接着させることができる。接着面に糊残りの心配もなく、非常に衛生的でかつ貼ったり剥がしたり何度でも繰り返し使用できる。また素材自体が透明性を有することから、商品のデザイン性・意匠性の向上にも貢献する。
【本技術の基本原理】
ポリオレフィン系の形状記憶シートHUMOFITTM(ヒューモフィット)が製品名である。人肌に限らず周囲温度に反応し、ガラス転移温度(ポリマーが劇的に軟化する温度)が28℃を超えると粘着性を発現する。また、粘着力は温度によって異なる。 厚さは、用途に応じて100μmや300μm、600μmなどに対応する。常温ではゴムのようにしなやかで、力をかけずに曲げたり、折ったり、ひねったり、伸ばしたりすることができる。初期応力に対して硬いものの、ジワジワと伸び、変形すると一定時間形状を維持しフェルトのように緩やかに元の形状に戻る形状記憶特性も持つ。
ヒューモフィットは、温度依存性があり、加温すると柔らかく、変形しやすい素材で、機械特性としては、10~50℃の間で弾性率・引張強度が大きく変化する。40℃以上の高温下では、ほとんど力をかけずに伸びるほど柔らかくなり、10℃以下の低温では変化させた形状をほぼそのまま保つ特徴を持つ。
【本技術の特徴】
- 人の体温により自己粘着性を発現する。
- 接着剤を用いていないので、接着面に糊残りがなくきれいである。
- 何度でも繰り返して接着・剥離ができる。
- 接着厚みが薄く、透明であるのでデザイン性が優れている。
- 曲げたり、折ったり、ひねったり、伸ばしたり自由に変形することができる
【本技術の応用事例・想定用途】
想定用途の一つとして、面ファスナーの代替があげられる。このシートを使用することで、面ファスナー使用時、接着面への糸屑などのゴミ付着、破損、着脱時の「バリバリ」という音等を解消できる。さらに厚みもより薄く仕上がるので商品のデザイン性も向上する。
また、この新素材は、人肌で温めることで柔らかくカラダにフィットする性質から、衣料(インナー、シューズ、スポーツ、アウトドア等)・服飾雑貨(腕時計のベルト、眼鏡、ベルト、玩具等)、医療・介護用品(サポーター、バンド、防護服、フェイスマスク等)各産業分野における固定部材として、広く利用できる可能性を持つ。