イネのもみ殻を原料とした多孔質炭素材料に、従来の活性炭より優れた体臭吸着および原因菌捕捉効果を発見した。
【本技術の概要】
ロート製薬とソニーの共同研究により、余剰バイオマスであるイネの籾殻(もみがら)を原料とした多孔質炭素材料『トリポーラス』が、加齢臭の原因である2-ノネナールをはじめとする各種体臭成分への吸着特性および原因菌の捕捉効果が高いことを発見した。籾殻は日本だけで年間約200万トン、世界中では年間約1億トン以上も排出されている。
本研究で、独特な微細構造をもつトリポーラスは、吸着・吸臭剤として従来から知られている活性炭よりも各種体臭成分(汗臭、足臭、腋臭、加齢臭)の吸着率が高く、体臭成分の種類による影響も小さいことがわかった。両社は、引き続き体臭成分の吸着および原因菌の捕捉効果に関する研究に取り組むと同時に、多分野へ応用して行く計画である。
【本技術の基本原理】
トリポーラスは籾殻を炭化後に、籾殻に含まれていたシリカを除去して得られた天然由来の多孔質カーボン材料である。その微細構造は、2nm(ナノは10億分の1メートル)のマイクロ孔、2〜50nmのメソ孔、1μmのマクロ孔の3種の異なる細孔(トリポーラス)が複合して存在していることから、各種体臭成分(汗臭、足臭、腋臭、加齢臭)の吸着率が高いことに加え、従来の活性炭では吸着しづらかった液相内での吸着速度が速く、活性炭では除去しづらい大きな有機物質の除去にも優れている。フミン質のような大きな有機分子、アレルゲン蛋白質、ネコカリシウイルスやバクテリオファージMS2など、活性炭よりも高い除去特性をもつ。
トリポーラス吸着特性を明らかにする目的で、各種体臭成分の原因菌に対する補足効果を既存活性炭A、B、Cと比較試験を行った結果を示す。その結果、トリポーラスは、既存の活性炭に比較して各種体臭成分の原因菌に対する捕捉効果が高いことがわかった。
【本技術の特徴】
① トリポーラスはマイクロ・メソ・マクロ と 3つの領域に大きな細孔を持つこと。
② 活性炭と比べてメソからマクロにかけて大きな細孔を持つこと。
⑤ 分子量の大きな分子構造体に対して高い吸着容量を持つこと。
⑥ 速い粒子内拡散に起因する高速吸着性があること。
⑦ 液相中では分子量の大きな物質の分離・除去することができる。
⑧ 高多孔性のためフィルターの圧力損失の低減化にも貢献する。
⑨ アレルゲン物質、インフルエンザウイルスの水中下での除去効果もある。
【本技術の応用事例・想定用途】
イネの籾殻由来の多孔質炭素材料であるトリポーラスは、既存の活性炭とは異なる特徴的な細孔分布を有することから、各種体臭成分への吸着特性に優れるとともに、各体臭の原因菌の捕捉効果も高いことが見いだされた。
今後、加齢臭をはじめとする体臭除去のアプローチとして、本材料を洗浄剤などの吸着材として応用することで、より効果的なアプローチが可能になると見られる。
また、トリポーラスは、用途に合わせて形状や粒度(メッシュ)を調製できるので、消臭繊維などのアパレル分野から、浄水フィルターなどの水浄化分野、エアフィルターなどの空調産業分野、洗浄剤などのヘルスケア分野まで幅広い応用が期待される。
<参考>ソニー トリポーラス