NEDO 若手研究グラント平成24年度採択テーマから産学連携のための研究紹介

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革新的傾斜機能燃料極の創製による内部改質型カーボンニュートラル燃料電池の開発

バイオ燃料の固体酸化物形燃料電池(SOFC)への直接供給による高効率発電は、低炭素社会における最も理想的なエネルギー変換技術であるが、その安定作動は、内部改質反応に伴う熱的分布の発生により、従来の構成材料では極めて難しい。本研究では、階層的な多孔質構造および触媒機能を容易に且つ理想的に制御できるペーパー触媒技術を駆使して、熱的分布の均一化を達成した革新的カーボンニュートラル燃料電池技術を確立する。

研究機関・所属 九州大学 工学研究院・機械工学部門
氏名・職名 白鳥 祐介 准教授
研究テーマ名 革新的傾斜機能燃料極の創製による内部改質型カーボンニュートラル燃料電池の開発
応用想定分野 従来の発電機の2倍の発電効率を有するコンパクトな分散型電源、熱利用も可能な環境負荷を軽減できる固体酸化物形燃料電池(SOFC)
技術紹介

 バイオ燃料の固体酸化物形燃料電池(SOFC)への直接供給による高効率発電は、低炭素社会における最も理想的なエネルギー変換技術であるが、その安定作動は、内部改質反応に伴う熱的分布の発生により、従来の構成材料では極めて難しい。本研究では、階層的な多孔質構造および触媒機能を容易に且つ理想的に制御できるペーパー触媒技術を駆使して、熱的分布の均一化を達成した革新的カーボンニュートラル燃料電池技術を確立する。

 本研究では、異なるバックグラウンドを有する研究者でチームを構成してバイオ燃料直接内部改質型SOFC(Bio-SOFC)技術の確立を目指す。自由な構造設計が可能なペーパー触媒技術と計算化学の融合により、SOFC内の反応および温度分布の均一化をもたらす革新的傾斜機能燃料極材料の設計を行い、これを適用した新構造の固体酸化物形燃料電池を開発する。開発SOFCの性能評価を、熱画像解析、熱応力解析、インピーダンス解析等、高度な非破壊診断技術を駆使して行い、これを材料設計側にフィードバックし、目標を達成する。

技術の特徴
ジルコニアファイバーを含み、バイオガスおよびバイオディーゼル供給時に、従来の粉末状触媒と同等のメタン転化率を、約1/10の触媒重量で示すペーパー触媒を開発した。
ペーパー触媒内へのアルカリ土類金属の添加により、Ni含有量を、さらに1/10に低減することが可能である。
当触媒材料は紙形状であるために、その上にイオン伝導性緻密電解質薄膜および空気極を形成することでSOFC化することが可能である。
本研究では、階層的な多孔質構造および触媒機能を容易に且つ理想的に制御できるペーパー触媒技術を駆使し、熱的分布の均一化を達成した革新的カーボンニュートラル燃料電池を創製する。
本技術が完成すれば、従来の発電機の2倍の発電効率を有するコンパクトな分散型電源として普及し、熱の利用も可能となるため、環境負荷の軽減に大きく寄与するものと期待される。
特許出願状況

2件出願済み

研究者からのメッセージ

 本研究は、バイオ燃料を効率良く改質する紙形状触媒構造体を創製し、これをガス流れ方向に配列した革新的傾斜機能燃料極を開発してSOFC内温度分布の均一化を目指す新しい試みです。本技術の導入により直接内部改質型のSOFCが実現し、SOFCの発電効率の向上およびシステムのコンパクト化が可能となります。セラミック積層化技術を有する企業との、セル作製プロセス、セルのスタック化、システム化に関する共同研究を希望しています。

参考:

九州大学 工学研究院・機械工学部門 水素利用プロセス研究室
http://www.mech.kyushu-u.ac.jp/~hup/

発表論文:

1.
"Internal Reforming SOFC Running on Biogas", Y. Shiratori et al., Int. J. Hydrogen Energy, 35, 7905 (2010).
2.
"バイオ燃料供給時のSOFCの発電特性"、白鳥祐介他、第19回SOFC研究発表会講演要旨集、220、(2010)
3.
"内部改質型バイオガスSOFCの可能性について"、白鳥祐介他、第18回SOFC研究発表会講演要旨集、248、(2009)
4.
"Feasibility of Direct-biogas SOFC", Y. Shiratori et al., Int. J. Hydrogen Energy, 33, 6316 (2008).